COPDとは
COPD(chronic obstructive pulmonary disease; 慢性閉塞性肺疾患)は、タバコ煙に含まれる有害物質の長期吸入によって引き起こされる肺の病気です。労作時の息切れ(呼吸困難)、慢性の咳とたんが特徴です。徐々に進行するため、症状を自覚していない場合もあります。病気が進行すると、体重が減り、筋力が落ちていきます。日本では500万人以上いると言われていますが、治療を受けている患者数は22万人程度であり、多くの方が未受診・未診断になっています。
病気のしくみ
COPDはタバコの煙を長期にわたり吸引することで起こる肺の慢性炎症です。炎症には、好中球、マクロファージ、CD8+リンパ球、好酸球、および気道上皮細胞、線維芽細胞などが関与しています。肺の中では、空気の通り道(気道)の炎症(気管支炎)と、酸素を取り込む肺胞の障害(肺気腫)が起こります。病気は、肺の血管(肺高血圧)、そして全身(栄養障害、骨格筋機能障害など)に進んでいきます。
病気の原因
タバコの煙には様々な有害物質が含まれます。オキシダント(酸化ストレス)は、タバコの煙自体に含まれます。また、煙により刺激された炎症細胞(好中球、マクロファージ)からも産生されます。炎症細胞は、タンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)やメディエーターを産生し、肺気腫、気管支炎、血管障害を起こします。
診断と検査
診断は呼吸機能検査で行います。また、肺気腫、気管支炎の診断に胸部レントゲン、胸部CTを行います。40歳以上で、長期の喫煙歴があり、慢性の咳とたん、体動時の呼吸困難がみられればCOPDを疑います。
- 診断基準
-
- ①気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満
- ②気流閉塞をきたす他疾患を除外
治療
発症の予防には、タバコ煙からの回避(喫煙を開始しない、受動喫煙のない環境)が第一です。COPDと診断された場合には、禁煙、ワクチン接種、薬物療法を行います。呼吸困難が強い場合は、呼吸リハビリテーション、栄養指導、酸素療法、換気補助療法など包括的な管理を行います。
1.薬物治療
COPDでは空気の通り道(気道)の閉塞で呼吸困難を生じるため、長時間にわたり効果のある気管支をひろげる吸入薬(気管支拡張薬)による治療が推奨されています。気管支拡張薬には抗コリン薬とβ2刺激薬の2種類があります。症状によって両剤の併用も行います。また、増悪を繰り返す場合は吸入ステロイド薬の追加を検討します。
2.β2刺激薬の作用機序
気管支の収縮と弛緩は、気道平滑筋により調節されています。吸入β2刺激薬は、気道平滑筋細胞のβ2受容体を活性化し、気道平滑筋を弛緩させることで気管支拡張効果を発揮します。
3.抗コリン薬の作用機序
神経から放出されるアセチルコリンは、気道平滑筋を強力に収縮させることが知られています。COPDでは、気道上皮傷害によりアセチルコリンが過剰に放出されます。抗コリン薬はアセチルコリンの作用をブロックし、長時間にわたる気管支拡張効果を発揮します。排尿障害を伴う前立腺肥大症、閉塞隅角緑内障では投与禁忌になります。
4.薬剤はどう選ぶ
薬によって吸入器の特徴、吸入方法、吸入回数などが異なります。選択肢の中から、実際に薬を手に取って、最も使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
当院では、COPDの診断、治療、必要に応じて在宅酸素療法の導入が可能です。また現在喫煙中の方には禁煙外来を行っています。
是非、ご相談ください。